OpenBabel による分子力学計算

メニューバーの以下のコマンドを紹介します.
これらの機能により,任意の分子のエネルギーを極小化したり,安定コンフォメーションの探索をおこなうことができます.
これらの計算では,分子間の相互作用を考慮しません.

インフォメーション

OpenBabelでのコマンド

ここで使っている機能は,OpenBabel の以下のコマンドを利用しています.

Builcule 内部での処理

Builcule では,libopenbabel を使い,下のように処理しています.


エネルギー極小化

ここでは一例として,[実験(X)]-[エネルギー極小化(選択分子)] の実行例を紹介します.

説明用のモデルとして,ジグリシンとメタンを作成しました.
メタンの構造を,わざと歪めています.

処理したい分子を指定

エネルギー極小前

分子エディタ上でエネルギー極小化したい分子の番号をクリックして反転表示させます.
画像では,分子 1 を反転表示させて指定しています.

分子の番号が判らない場合は,目的とする分子を構成する原子をピック(クリックして原子の色を赤紫色に変える)し,分子エディタの [ピックを選択] ボタンをクリックしてください.
ピックされた原子を含む分子の番号が反転表示されます.

計算オプションを設定して開始

エネルギー極小化の設定ダイアログボックス

分子を選択して [実験(X)]-[エネルギー極小化(選択分子)] を実行すると,画像に示すダイアログボックスが表示されます.
これは,他のエネルギー極小化メニューでも同じものです.
画像に示すように,また OpenBabel のコマンドラインオプションと同様に,以下の設定が可能です.

[開始] ボタンをクリックすると計算が始まります.

なお,力場と極小値探索アルゴリズムの組み合わによっては異常終了する場合がありました.
計算開始前の全分子を記述したバックアップファイルが "/$HOME/.builcule/bak.bcl" に作成してあります.

端末への出力

計算経過が端末に出力されます.
ここでの出力をコピー & ペーストしておきます(タブを 半角スペース 4 個に置換しています).

A T O M   T Y P E S

IDX    TYPE    RING
1    1    NO
2    5    NO
3    5    NO
4    5    NO
5    5    NO

F O R M A L   C H A R G E S

IDX    CHARGE
1    0.000000
2    0.000000
3    0.000000
4    0.000000
5    0.000000

P A R T I A L   C H A R G E S

IDX    CHARGE
1    0.000000
2    0.000000
3    0.000000
4    0.000000
5    0.000000

S E T T I N G   U P   C A L C U L A T I O N S

SETTING UP BOND CALCULATIONS...
SETTING UP ANGLE & STRETCH-BEND CALCULATIONS...
SETTING UP TORSION CALCULATIONS...
SETTING UP OOP CALCULATIONS...
SETTING UP VAN DER WAALS CALCULATIONS...
SETTING UP ELECTROSTATIC CALCULATIONS...

C O N J U G A T E   G R A D I E N T S

STEPS = 2500

STEP n     E(n)       E(n-1)    
--------------------------------
    1     343.985    15818.123

C O N J U G A T E   G R A D I E N T S

STEPS = 2500

STEP n     E(n)       E(n-1)    
--------------------------------
    1      22.994     343.985
   10       0.026       0.026
   15       0.026       0.026
    CONJUGATE GRADIENTS HAS CONVERGED

結果

エネルギー極小化後

計算が終了すると,出力ファイルから座標を取り込みます.
すると,画像のように,メタン分子がエネルギー極小化された構造に変わります.

例えば,Builcule でタンパク質とリガンドを作成しておいて,リガンドのみエネルギー極小化(構造の調整)できるという可能性が示唆されました.


コンフォメーション探索

作成した構造をそのまま計算ソフトに投入すると,計算に時間がかかるとか,エネルギーの高い極小点で収束してしまうといった不都合が生じる可能性が高くなります.
したがって一般論として,適切なコンフォメーションを設定する作業が必要です.

そこで,上述のエネルギー極小化の処理を,
エネルギー極小化 → コンフォメーション探索 → エネルギー極小化
と拡張した機能を作成しました.
まあ,2 回めの処理でのエネルギー極小化はあまり意味が無いかもしれませんが.

ここでは使用の一例として,[実験(X)]-[コンフォメーション探索(全分子)] の実行例を紹介します.

試料の調製

試料としてトリグリシンを作成

試料は,トリグリシンとしました.
直線状の構造です.

条件の設定

コンフォメーション探索の設定ダイアログボックス

画像は,コンフォメーション探索を実行したときに表示されるダイアログボックスです.
エネルギー極小化と比べ,設定項目が 2 個増えています.「コンフォーマー数」と「コンフォーマーステップ数」です.
それぞれ,下記の設定用パラメータです.

結果

コンフォメーション探索後の構造

コンフォメーション探索の結果,アミノ基とカルボキシル基がイオン結合した構造が得られました.