アントシアニジンの色を計算してみる

アントシアンは野菜や果物に含まれるフラボノイド系の天然物である.アグリコンをアントシアニジン,配糖体をアントシアニン,これらを総称してアントシアンという.アントシアニジンの基本骨格は,フラビリウムカチオンという陽イオンである.

アントシアンには種々の誘導体があり,特徴的な色を有するものや,pH によって色が変化するものがある.
本ページでは,いくつかのアントシアン系モデル分子について時間依存密度汎関数 (TD-DFT) 法で紫外-可視スペクトルを計算し,構造と吸収極大波長とを関連付けられないか検討中である.
PC の能力不足のため中断した.新しい PC を作成してから再開する所存である.

インフォメーション

紫外-可視スペクトルの計算は,NWChem 練習ノートで練習しています.

目次(ページ内リンク)


構造
フラビリウムカチオンと,それに 1 個のヒドロキシを結合した場合
ヒドロキシを 2 個結合した場合

構造

アントシアンの構造上の特徴的をまとめておく.
アントシアニジンは,基本的に,フラビリウムカチオンのヒドロキシ誘導体である.
本ページでは,アントシアンのモデル分子の計算をしている.そのため,天然物化学の文献よりも単純な構造の分子を扱う.

フラビリウムカチオン

フラビリウムカチオンの構造式

アントシアンの骨格は,フラビリウムカチオンである.構造式を画像で示す.
ヒドロキシ基やカルボニル基の位置を確認する際や,環を確認する際に参照していただきたい.

本ページでは,例えば 2'-位がヒドロキシ化された 2'-ヒドロキシフラビリウムカチオンを,「2'OH」と表す.
「2'OH」はアルカリ性で解離して電気的に中性の 2'-ケトフラバンを生成する.これを「2'O=」と表す.
次の段落で構造式を示している.

フラビリウムカチオンの HOMO と LUMO

フラビリウムカチオンの HOMO と LUMO

アントシアンの色の本質を次のように,仮定を含め考えてみる.

フラビリウムカチオンの HOMO と LUMO を画像にした.
HOMO は B 環に,LUMO は A/C 環に分布している.
ヒドロキシ基が B 環に結合する場合と,A/C 環に結合する場合で,分子軌道の正常に大きな差異が発生するかもしれない.

電荷非分離型構造

電荷非分離型構造

フェノール性ヒドロキシ基は,アルカリ性で解離する.検索したらフェノールでは pKa=9.89(20℃) とのことであった.
フェノール性ヒドロキシ基を有するフラビリウムカチオンは,アルカリ性では両性イオンとなる.
有機電子論的な解釈である.図のような構造式を描けば一目瞭然であるが,
フェノール性ヒドロキシ基を有するフラビリウムカチオンのなかには,アルカリ性で陽電荷が消失してしまう分子種がある.


フラビリウムカチオンと,それに 1 個のヒドロキシを結合した場合

2'OH のスペクトル

まず,フラビリウムカチオンにヒドロキシを 1 個結合して,吸収極大がどのように変化するか計算してみた.
計算した分子は,ヒドロキシ基を解離させた場合,電荷非分離の共鳴構造が描けるものである.それらは O= と記している.
計算方法は,ページの末尾に記した.

吸収極大として挙げたピークは,目視で大きなピークであると見えたものである.
画像は,2'OH から得られたスペクトルである.720nm のピークを(小)と示したので例として揚げた.

化合物吸収極大(nm)LUMOHOMOLUMO - HOMO
フラビリウムカチオン419-0.269857-0.3830460.113189
4OH392-0.255677-0.3806840.125007
4O=279(小),263-0.067236-0.2390780.171842
5OH436,414-0.265504-0.3782620.112758
5O=419-0.094516-0.1995530.105037
7OH410-0.259940-0.3747610.114821
7O=393-0.091072-0.2102120.119140
2'OH720(小),436-0.274957-0.3546710.079714
2'O=649,463,421-0.128434-0.1729650.044531
4'OH475-0.262557-0.3589270.096370
4'O=494-0.123327-0.1857430.062416

共鳴構造が描ける構造について計算したのであるが,単純な結果にはならなかった.
(計算前は,「共鳴安定化」により超波長側にシフトすると予測していた)

B 環にヒドロキシ基を 1 個結合すると,吸収極大波長は長波長側(低エネルギー側)にシフトした.
フラビリウムカチオンの HOMO が広がっている 2'-位に結合した場合は,広がっていない 4'-位より効果が大きかった.

A/C 環にヒドロキシ基を 1 個結合した場合は,長波長側への大きなシフトは見られなかった.
どちらかというと,低波長側(高エネルギー側)へシフトする分子種が多いようである.

励起エネルギーと吸収極大波長

LUMO - HOMO と吸収極大

説明変数を LUMO - HOMO,目的変数を吸収極大波長とするグラフを描いてみた.
光エネルギーで,電子が HOMO から LUMO へ移動するという仮定の検証である.
ただし,次のように恣意的なのであるが.

計算アルゴリズムは理解できないので感想である.ここでは一回の計算で波長とエネルギー差を得ている.循環論法になっていれば嫌だ.

とにもかくにも,LUMO - HOMO が小さい(HOMO から LUMO への励起エネルギーが小さい)ほど,吸収極大波長が長波長となる傾向が得られた.


ヒドロキシ基を 2 個結合した場合

一部の構造(看板に偽りありで,カルボニル型ばかりである)を計算したのですが,その結果は上のセクションと整合性が取れていません.
論理が破綻したところで残念ですが,PC の能力不足のため中断せざるを得ません.新しい PC を作成してから再開です.

化合物電荷吸収極大波長(nm)LUMOHOMOLUMO - HOMO
5O=,8O=A,A-1655(小),4320.0487020.0138930.034809
3O=,7O=C,A-14810.064847-0.0147380.079585
3O=,5O=C,A-14850.062865-0.0154110.078276
3O=,2'O=C,B-1644,574,4560.035442-0.0336740.069116
3O=,4'O=C.B-14790.035304-0.0440000.079304
6O=,4'O=A,B-1699,5960.072860-0.0523240.125184